水平線について


海の見える町で育ちました。冬には雪の降る土地です。


私が卒業した中学校には、校歌というものがありませんでした。でも、その代わりに、こんな歌がありました。


  風はどこから吹いてくる

  丘を吹く風 海の風

  風はどこから吹いてくる

  丘を吹く風 海の風


  一、港の町に育つ仕合わせは

    風の故郷と行く先を

    マストのかもめとともに知る

    みんな行く手を知っている

     広い世界で働こう

     広い世界を知りぬこう


  二、たとえわれらの町の長い冬

    空は暗くて海重くとも

    未来明るい羅針盤

    さあ船出しようエンジンかけて

     広い世界で働こう

     広い世界を知りぬこう


作詞は郷土出身の作家、堀田善衞(1918-1998)。作曲は團伊玖磨(1924-2001)です。


当時、学校の先生から、「これは校歌ではない。堀田氏に校歌の作詞を依頼したら、校歌ではなく、子どもたちが後々まで口ずさめるようなものなら作りましょうと言われ、誕生したのがこの歌だ」と教えられました。


小学校の校歌も、高校の校歌も、もう覚えていませんが、この歌だけは今でも歌うことができます。この歌と、先生から聞いたこの話が、好きでした。


水平線のむこうには、広い世界がある。自分の知らない場所へと、つながっている。そのことが、心をどこまでも自由にしてくれました。


いま、故郷とは別の、海が見える町から、新しく出版活動を始めようとしています。


海が大地をむすぶように、言葉は人をつないでいく。そう信じて、ささやかではあっても本をつくり、まだ会ったことのない誰かに向けて、世に送りだしていきたいと思います。


「水平線を見て育った者は、真直ぐ前を見て行くのだ」(堀田善衞)


2017年9月

編集室 水平線

西 浩孝